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EC市場の成長、24時間営業店舗の需要増加、そして深夜時間帯の交通のスムーズさ──こうした背景から、夜間配送は依然として物流業界の重要な柱です。しかしその一方で、深夜勤務によるドライバーの健康リスクやワークライフバランスの崩壊といった課題も無視できません。本記事では、「働き方改革」の視点から夜間配送業務を見直し、労働環境改善と生産性向上を両立させる制度設計や運用の工夫について、実践的なヒントを紹介します。
深夜配送のニーズは根強い
・交通渋滞の回避:都市部では昼間の配送に比べ、夜間の方が移動効率が高い。
・生鮮・冷凍商品の早朝納品:鮮度を保つための夜間便が求められる。
・24時間営業店舗への対応:コンビニ・ドラッグストア・飲食店などの夜間受け入れニーズ。
物流業界の人手不足が深刻化
2024年の「働き方改革関連法」適用による残業規制、いわゆる“2024年問題”をきっかけに、ドライバー不足に拍車がかかり、夜間配送の持続可能性が問われるようになりました。
健康被害・生活リズムの乱れ
→ 睡眠障害、生活習慣病、メンタルヘルスの不調など。
人材定着率の低下
→ 夜勤専任者の募集難・離職率の高さ。
長時間労働やサービス残業の温床
→ 深夜帯はチェック体制が緩く、管理が不十分になりがち。
シフト制度の見直しと「準夜勤」の導入
完全な深夜勤務ではなく、夕方〜深夜0時前後で終わる「準夜勤枠」を設定することで、労働負荷を軽減できます。
例:17:00〜24:00のシフトで早朝配送をカバー
メリット:生活リズムの乱れが最小限、翌日の日中を有効に活用可能
ドライバーごとの「希望勤務時間」ヒアリングと柔軟運用
夜間勤務を希望する社員と、避けたい社員を事前に把握することで、無理のない働き方のマッチングが可能になります。
社員のライフスタイルに応じたシフト設計
家族持ち・高齢ドライバーへの配慮が可能
夜間業務のインセンティブ設計
給与面での優遇だけでなく、休暇日数の増加や表彰制度、深夜勤務手当の見える化などでモチベーションを維持します。
・夜勤1本ごとに加算される「特別ポイント制度」導入
・累積で休暇取得や福利厚生と交換できる仕組み
配送ルートの最適化ツール(AI配車)
AIによるリアルタイム配車・ルート最適化ツールを導入すれば、無駄な回り道や非効率な積み下ろしを削減し、拘束時間短縮に直結します。
勤怠管理と労働時間の「見える化」
システムで勤務時間を正確に把握・記録することで、労働時間の上限管理や、法令遵守の徹底が可能になります。
デジタル日報・報告アプリで事務作業の短縮
アナログ日報から、スマホやタブレット入力に移行し、帰社後の事務処理を効率化。ドライバーの「拘束後時間」を削減します。
>関東地方・中型運送会社
「以前は深夜3時終わりが常態化していたが、20:00〜0:00シフトを中心にしたら、定着率が上がった。家族との時間が確保できるようになったという声も多い。」
>関西圏・食品輸送企業
「AI配車システムを導入したことで、夜間の走行距離が平均15%短縮。時間内に確実に帰れるという安心感がドライバーに広がっている。」まとめ:夜間配送を“負担”から“選ばれる働き方”へ
今後も夜間配送のニーズは消えることはありません。だからこそ、柔軟な制度設計と現場ニーズを汲んだマネジメントで、夜間配送を「過酷な労働」ではなく「選ばれる働き方」に変える必要があります。「夜間配送」と「働き方改革」は相反するものではなく、知恵と仕組みで両立できる時代に突入しています。企業と現場が一緒に取り組むことで、持続可能な物流体制が構築できるのです。