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中小運送会社の事業承継対策|親族内承継と第三者承継、どちらを選ぶべきか?

2025年7月4日
運送会社M&A

はじめに

 高齢化が進む日本の中小企業。その中でも、人手不足が深刻な運送業界では、経営者の高齢化に伴う「事業承継問題」が避けられない課題となっています。

「親族に引き継ぐべきか?それとも外部に譲渡すべきか?」

本記事では、中小運送会社がスムーズな事業承継を実現するための選択肢と準備のポイントについて、親族内承継と第三者承継の違いを中心に解説します。

なぜ今、中小運送会社に事業承継対策が必要なのか

経営者の高齢化と後継者不足の現状

 中小企業庁調査によると現在、中小企業の経営者の平均年齢は60歳以上。運送業も例外ではなく、後継者が未定の企業は全体の約6割に上るとされています。

「まだ大丈夫」と先送りすることで、廃業や清算という選択肢しか残らない危険性があります。

事業承継には時間がかかる

 事業承継は単なる名義変更ではなく、以下のような要素を時間をかけて引き継ぐ必要があります。

  • ・経営ノウハウ
  • ・社内体制
  • ・取引先との信頼関係


一般的に、準備には3〜5年かかるとされており、早期着手が成功のカギとなります。

中小運送会社の主な事業承継の方法

親族内承継とは?

 親族内承継とは、子どもや兄弟など親族に会社を引き継ぐ方法です。
信頼関係や企業文化を共有しやすく、多くの中小企業がまず検討するパターンです。


第三者承継(M&Aなど)とは?

 親族以外への承継には、以下のような選択肢があります。

  • ・社内の有能な従業員への承継(内部昇格)
  • ・他社や投資家への譲渡(M&A)


後継者がいない企業にとって、第三者承継は会社の存続と成長を両立できる有効な手段です。

親族内承継と第三者承継の違いを比較

以下の表は、両者のメリット・デメリットを比較したものです。

比較項目親族内承継第三者承継(社内承継・M&A)
後継者の範囲子や親族など社内の従業員や外部企業など広範囲
経営理念の継承共有しやすい理解・共感を得るまでに時間がかかることも
従業員・取引先の安心感高い(身内のため)引き継ぎ次第で信頼関係の再構築が必要
内部事情の理解高い買い手に対し情報開示・説明が必要
後継者不在時の対応適任者がいない場合は承継が困難親族にこだわらず選択肢を広げられる
トラブルの可能性相続・親族間トラブルのリスクあり従業員の不安・離職のリスクあり
会社の存続可能性経営能力に左右されやすい資本力や経営力のある企業に引き継ぐ可能性あり

親族内承継を成功させるためのポイント

1. 後継者の早期選定と育成

 後継者が決まったら、現場経験と経営経験を計画的に積ませることが必要です。
財務・労務・顧客管理など、幅広いスキルを段階的に習得させましょう。


2. 株式・資産の承継準備

 相続や贈与には税金がかかるため、事前の対策が不可欠です。

  • ・株式の段階的移転
  • ・生前贈与の活用
  • ・税理士・弁護士との協力体制の構築


3. 親族間トラブルを防ぐ工夫

 後継者以外の親族への説明責任も重要です。財産分与や給与の扱いは書面で明確化して、トラブルを未然に防ぎましょう。

第三者承継(M&A)を選ぶ際の注意点

1. 買い手の見つけ方と支援機関

信頼できるマッチング機関の活用がポイントです。

  • ・商工会議所の「事業引継ぎ支援センター」
  • ・地域の信用金庫・地銀
  • ・M&A仲介会社(専門業者)

2. 会社の「見える化」と価値向上

買い手に選ばれるためには、会社の強みや財務状況を可視化することが必要です。

  • ・業務マニュアルの整備
  • ・損益の明確化
  • ・労働環境の見直し

3. 従業員・取引先への配慮

情報開示のタイミングを慎重に判断し、従業員の不安や取引先との信頼を損なわないよう対応しましょう。

スムーズな承継のために活用できる制度と支援策

事業承継・引継ぎ補助金の活用

 中小企業庁では、承継時の設備投資・経営改善などに活用できる「事業承継・引継ぎ補助金」を提供しています。毎年内容が更新されるため、最新情報の確認が重要です。

専門家によるサポート体制の活用

事業承継は法律・税務・経営が複雑に絡むプロジェクトです。

  • ・税理士
  • ・中小企業診断士
  • ・M&Aアドバイザー など


複数の専門家との連携体制を構築することで、スムーズな承継が期待できます。

まとめ

中小運送会社の未来を守るために、今からできる準備を 

中小運送会社が将来にわたり事業を継続するためには、早期かつ計画的な事業承継対策が必要不可欠です。親族内承継も第三者承継も、どちらにもメリット・デメリットが存在しますが、重要なのは次の3つです。

・自社に合った承継方法の見極め

・後継者・買い手の早期確保

・専門家と連携した承継プランの策定


👉 まずは、現状の把握と対話から始めてみましょう。未来の安心は“今”の準備から始まります。

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