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運送業のIT化最前線:業務効率を高めるシステム・アプリ活用術

2025年7月4日
運送会社M&A

はじめに

― 配車管理・勤怠・帳票・請求を一元化する方法とは ―

 運送業界では、「2024年問題」への対応や人手不足・燃料費高騰など、多くの経営課題が山積しておりそのなかで注目されているのがITによる業務効率化です。
特に中小運送会社にとって、配車・勤怠・帳票・請求を一元化できるITツールの導入は、省力化と利益確保の両立に直結します。この記事では、運送業で活用されている主要なシステム・アプリと、その導入によるメリット、そして成功につながるポイントを解説します。


なぜ今、IT化が必須なのか?

  • ・長時間労働の是正(時間外労働960時間規制)
  • ドライバー不足への対応(業務の属人化を解消)
  • ペーパーレス対応や電子帳簿保存法への準拠
  • 配車業務・請求業務のブラックボックス化を解消


中小企業でもクラウドツールやアプリを使えば、小コストで大きな業務改善が可能になっています。

運送業におけるIT導入の主要領域と活用ポイント

領域主な機能活用ポイント
配車管理車両割当・ルート計算・稼働状況把握手配ミス・空車率の低減、急な変更にも柔軟対応
勤怠管理出退勤記録・残業集計・GPS連携労働時間の適正把握、労基署対応もスムーズに
帳票作成運転日報・点呼記録・事故報告書書類の電子化で転記・保管作業を削減
請求管理請求書作成・回収管理・連携帳簿誤請求防止、キャッシュフロー改善、未収金削減

導入効果を実感している事例(一部紹介)

■ 事例:地方の中小運送会社(車両15台・従業員20名)

Excelと紙で管理していた配車表をクラウド配車システムに切り替え。
ドライバーのスマホアプリで日報・点呼・出退勤も一元管理。
→ 配車担当者の作業時間が1日3時間→1時間に短縮
→ 請求漏れゼロ・紙保管ゼロを実現

中小運送業者向け・ITツール導入のステップ

現場の課題を洗い出す

  • ・「配車が属人的になっている」
  • ・「請求書作成に毎月時間がかかる」
  • ・「運転日報が手書きで集計に手間」など
    → どの業務を省力化・自動化したいかを明確に


スモールスタートで導入

  • ・いきなり全部を変えず、一機能から導入
     例:まずは配車表だけをクラウド化/点呼簿をアプリ化


スタッフとの連携を強化

  • ・現場の声を反映し、「使いやすさ」にこだわる
  • ・ドライバー・事務スタッフへ導入前の研修を実施
  • ・「何のために使うか」を共有し、ITへの抵抗感を減らす

よく使われる運送業向けITツール(参考)

カテゴリツール例特徴
配車管理MOVO、Loogia、トラック簿クラウド型でリアルタイム対応可能
勤怠管理KING OF TIME、ジンジャー勤怠モバイル打刻・GPS機能付き
帳票作成LogiTACT、運転日報アプリなどデジタル点呼・日報作成をスマホで完結
請求管理請求QUICK、MFクラウド会計連携・定期請求対応も可能

※導入費用や機能は事業規模・車両数によって異なるため比較が必要

成功事例:中小運送会社 紙とExcelから脱却した事例

企業プロフィール

  • ・所在地:福岡県
  • 事業内容:一般貨物運送業(チャーター・定期便中心)
  • 従業員数:20名(ドライバー15名、事務5名)
  • 保有車両:20台(2t〜4t)


導入前の課題

  • ・配車表をExcelで手入力、日々の手配に手間とミスが多発
  • ・ドライバーの勤怠管理が手書きの出勤簿で集計に時間がかかる
  • ・請求書は手作業で作成しており、漏れや遅延が頻発
  • 日報や点呼簿が紙ベースで、保管・管理も煩雑


■ 導入したシステム・ツール

項目ツール名主な機能
配車管理クラウド型配車システム車両・ドライバーの割当、進捗確認、ルート調整
勤怠管理モバイル勤怠アプリスマホ打刻・GPS連携で出勤状況を自動記録
帳票作成デジタル運転日報アプリ日報・点呼簿の電子化、事故報告も即入力
請求管理クラウド請求サービス自動請求書発行、月末処理を自動化


導入の進め方

1.最初の3か月は配車システムのみ導入し、配車担当者に慣れてもらう

2.次に勤怠管理と日報アプリをドライバーに展開(1週間の操作研修を実施)

3.最後に請求管理をクラウド化して、事務作業全体を一元化


導入後の効果

項目Before(導入前)After(導入後)
配車業務手配に1日2時間、引き継ぎ困難手配時間を1時間以内に短縮、複数人で共有可能
勤怠集計月末に5時間以上かけて集計自動集計により集計作業ゼロへ
請求処理手作業・Excelベースで請求漏れ多発自動作成・一括送信、誤請求ゼロに
管理精度紙と記憶頼りの管理体制データに基づく客観的な業務把握が可能に


■ 社長のコメント

「現場は最初アプリに抵抗がありましたが、1回覚えたら“紙より楽”と変化しました。今では『次に何をデジタル化できる?』と社員から提案が出るようになりました。」


成功のポイント

✔ 一気にすべてを変えず、段階的にIT化を導入

✔ 操作に不慣れなスタッフへの丁寧なサポート体制

✔ 日報や点呼など、「義務化されている業務」から着手することで現場も納得

まとめ

ITは「省力化」のためでなく「利益を守る手段」

 IT化というと、「コストがかかる」「現場が反発する」といった懸念もあるかもしれません。しかし実際には、現場のミスやムダを減らし、管理者の負担を軽減し、結果的に利益を守ることにつながるのがITツールです。中小運送会社こそ、少人数で複数業務を担う体制が多いため、ITの力をうまく使えば驚くほど効率化できます。まずは一歩、小さな改善からスタートしてみましょう。

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