運送業のドライバー採用と人材確保のポイント

はじめに

運送業の人手不足対策とは？

労働環境の改善による定着率向上

労働時間の適正化

・シフト制の導入や休憩時間の確保により、長時間労働の是正を図る
・共同配送・予約配送の導入による待機時間の短縮

賃金・待遇の見直し

・運転手の基本給の引き上げ、賞与やインセンティブ制度の導入
・社会保険・福利厚生の充実により、離職率を下げる

働きやすい環境整備

・自動ブレーキ・バックモニターなど安全装備の標準化
・休憩所・仮眠室・待機場所の快適性向上

採用戦略の強化で人材確保を実現

外国人ドライバーの受け入れ

・「特定技能制度」による外国人労働者の活用
・日本語教育や生活支援の整備で離職防止

女性・シニア層の採用促進

・女性専用トイレ・更衣室の整備
・軽貨物配送や短時間シフト制でシニアも働きやすく

未経験者の積極採用

・免許取得支援制度を導入し、普通免許から中型・大型へのステップアップを支援
・初心者向けの研修・同乗制度で早期戦力化を図る

DX活用で業務効率と人手不足を解消

自動運転・AI技術の導入

・自動運転トラックや隊列走行の実証実験が進行中
・AIによるルート最適化で効率配車が可能に

配車・業務管理のIT化

・配車管理システム（Uber型マッチング）の活用
・電子伝票・勤怠管理などのペーパーレス化

ロボット・ドローンの活用

・無人配送車やドローンによるラストワンマイルの自動化
・労働力の補完＋顧客満足度向上

物流業界全体での連携が不可欠

荷待ち時間の削減

・物流施設の24時間稼働、予約受付システムの導入
・車両の待機時間を短縮し、ドライバーの稼働効率を改善

共同配送・車両の効率活用

・中小企業間の連携による共同配送の仕組みづくり
・トラック積載率を最大化し、1台あたりの輸送効率を向上

荷主との連携強化

・EC事業者・メーカーと連携し、適正運賃の確保と需要予測の共有を進める
・無理な短納期要求を避け、ドライバーの負担軽減を実現

運送業の人材確保は「職場環境」と「テクノロジー」の両輪がカギ

　人手不足が深刻化する運送業界では、労働環境の改善・多様な人材採用・DX導入・業界全体の協力が不可欠です。
特に以下の4点が人材確保の鍵となります。

・ドライバーが定着する働きやすい環境づくり
・外国人・女性・シニアなど新たな労働力の活用
・IT、AIなどの技術で業務を効率化し、省人化を推進
・荷主や他社と協力し、業界全体で人材負担を軽減

企業単独では限界があるからこそ、社会全体での物流改革と働き方の見直しが求められています。

外国人雇用｜運送業における外国人ドライバー活用のポイント

運送業界では深刻な人手不足が続いており、外国人ドライバーの雇用が注目されています。特に2024年からは「特定技能1号」にトラック・バス・タクシーの運転業務が追加され、制度的な受け入れが可能になりました。本章では、制度の概要、メリット、導入時の課題と対策をわかりやすく解説します。

外国人ドライバーを雇用できる制度とは？

特定技能1号（2024年より運送業が対象に）

・対象業種：自動車運送業（トラック・バス・タクシー）
・在留期間：最長5年（家族の帯同不可）
・必要条件：技能試験＋日本語試験に合格
・現状の活用方法：雇用主は「登録支援機関」のサポート体制を整える必要あり

ポイント：2024年から本格的に外国人ドライバーの採用が可能に！

他の制度との違い

制度名	運送業での活用可否	主な対象業務	特記事項
特定技能1号	◯	トラック・バス・タクシー運転	日本語試験・技能試験が必要
技能実習制度	✕	技能職（建設・製造など）	運送業は対象外
技術・人文知識・国際業務	✕	事務・営業など	管理職・事務系業務向け

外国人ドライバー採用のメリット

慢性的な人手不足の解消

・国内の若年層の担い手不足を補完
・特に中長距離・夜間配送に対応可能な人材確保に有効

グローバル対応の強化

・多文化対応の運送体制を構築できる
・外国人観光客向けの対応力向上（バス・タクシー業務）

地域活性化と多様性推進

・地方都市での雇用創出にもつながる
・社内の多様性と国際理解の向上

外国人雇用に伴う課題と対策

日本の運転免許が必要

・外国の免許では日本での業務は不可
　対策：免許取得支援制度（費用補助・合宿教習プラン）を導入

日本語能力の壁

・配送指示や安全確認で日本語理解が必須
　対策：業務に特化した日本語研修（用語・地名・接客表現など）

生活支援・職場環境整備

・文化の違いからくるトラブルやストレス
　対策：住宅確保・銀行口座開設支援、ハラスメント防止研修の実施

企業側の受け入れ体制

・在留資格の管理や生活支援にかかる負担
　対策：登録支援機関を活用して法的手続きを代行
　　　　他社との共同受け入れでコスト分散（教育研修を合同で実施）

外国人雇用を成功させるカギ

・制度の正しい理解と、事前準備が不可欠
・単なる労働力確保ではなく「多文化共生」の視点が大切
・長期的な人材育成と定着支援に力を入れることで、企業の戦力として育てることが可能に

外国人雇用は運送業の人材不足を解決する有効な手段

外国人ドライバーの雇用は、今後の運送業の持続可能性を左右する重要な選択肢です。

・ 特定技能1号の制度活用が最も現実的
・免許取得支援・日本語教育・生活支援の整備が成功のカギ
・登録支援機関や外部リソースの活用で導入負担を軽減

正しい制度理解と受け入れ環境の構築を進めることで、外国人材は大きな戦力になります。運送業における未来の人材戦略として、積極的な検討が求められます。

労務管理｜運送業の人材定着・生産性向上のための4大対策

運送業界では深刻な人手不足が続いており、労務管理の質が企業の持続可能性を左右します。本章では、「労働時間の適正化」「賃金・待遇の改善」「健康・安全対策」「働きやすい職場づくり」の4つの視点から、運送業における労務管理のポイントと最新の対策を解説します。

労働時間管理の適正化

2024年問題への対応

・時間外労働の上限は「年間960時間（1ヶ月平均80時間）」に規制
・「改善基準告示」に基づき、休憩・休日・拘束時間を適正管理
・シフト制・交代勤務制を導入し、長時間労働を回避

デジタルツールの活用

・デジタルタコグラフ（デジタコ）で運行・労働時間を自動記録
・勤怠管理システムで時間外労働をリアルタイム集計
・AI配車システムで待機時間・無駄な移動を削減

賃金・待遇の適正化

公正な給与体系の構築

・時間外・深夜・休日手当の正確な支払いを徹底
・歩合制から「基本給＋インセンティブ」への移行で収入安定化
・福利厚生の充実（退職金・住宅手当・健康保険など）

ホワイト物流推進への対応

・荷待ち時間や荷役作業の削減を目指し、荷主と連携
・適正な運賃交渉を通じてドライバーへの待遇改善を図る

健康管理・安全対策の強化

ドライバーの健康維持

・定期健康診断・ストレスチェックの実施を義務化
・仮眠室・休憩施設の整備で過労を防止
・メンタルヘルス対策として相談窓口や外部機関との連携を強化

事故防止と安全教育の充実

・危険予知・ヒヤリハット事例を活用した研修
・運転シミュレーターで実践的な技能教育を提供
・ドライブレコーダーや衝突防止支援装置などの導入を促進

働きやすい職場づくりと人材確保

多様な人材の活用

・女性ドライバーの環境整備（トイレ・更衣室）
・シニア・外国人労働者の受け入れと教育体制の強化
・時短勤務・週休3日制など柔軟な働き方の導入

キャリアアップ支援制度の整備

・大型免許・運行管理者資格取得のサポート
・ドライバーから管理職・事務職への転向支援で長期雇用を実現

持続可能な運送業のために、労務管理の見直し

運送業の労務管理は、以下の4つを軸に改善することが重要です。

・労働時間を適正に管理し、法令を遵守する
・賃金・福利厚生を見直し、従業員満足度を高める
・健康・安全対策を徹底し、事故と離職を防止
・働きやすい職場環境を整備し、多様な人材を活用する

デジタル化や制度改革を活かし、よりよい職場環境を整備することが、優秀な人材の確保と定着、そして企業の成長につながります。

まとめ