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運送業を始めるには?開業手続きと許可の全手順

2025年5月12日
未分類

目次

はじめに

運送業はEC市場の拡大やラストワンマイル需要の高まりを受け、今まさに“始めどき”のビジネスです。本記事では、運送業を始めるための許可・手続きの全ステップを、初心者にもわかりやすく解説します。

一般貨物と軽貨物の違い、開業資金、許認可の取得方法、そして収益モデルや運賃設定のコツまで網羅。運送業の開業を成功に導く実践ノウハウがここにあります。

*価格・料金は2025年1月現在の一般的な料金を参考にしたものです。

運送業市場

運送業市場の魅力と成長性

EC市場拡大による物流ニーズの高まり

・BtoCの国内EC市場は2023年に20兆円超。今後も堅調に成長
・大手EC会社が自社の配送システムの普及し、出荷量増加
・D2Cビジネスの普及により、個別配送ニーズが増加
 *D2C=Direct to Consumer / 消費者直接取引

2024年問題とドライバー不足による新規参入のチャンス

・時間外労働の規制でドライバー不足が深刻化
・オンデマンド配送(即日・翌日配送)ニーズの高まり
・フリーランス軽貨物ドライバーの急増中

運送業の収益モデルと契約形態

運送業の主な収益モデル

距離・重量ベースの運賃収益軽貨物:8,000〜15,000円(50km以内)
2t車:15,000〜30,000円(50〜100km)
大型車:50,000〜100,000円(200km以上)
時間契約型(チャーター・スポット便)短期・高単価案件が多い
1日あたり:2t車で2〜3万円前後、10t車で5〜10万円以上
固定契約型(専属・請負契約)ECや小売業者との定期契約で安定収益
月額契約:50万〜150万円のケースも
運賃設定の基準と利益率輸送距離・重量・契約形態が主な要因
利益率は業種平均で5〜15%
原価計算をもとに適正な運賃設定が必要
収益向上のためのポイント高単価案件(緊急便・付加価値業務)の確保
固定契約による安定収益の確保
AI配車やルート最適化などのデジタル化による効率化

運送業はEC市場の成長に伴い、今後も需要が高まる分野です。
個人の軽貨物配送から法人による一般貨物運送まで、収益モデルや運賃設定の知識を持つことが成功の鍵となります。

収益の最大化を目指すには、以下の点を意識しましょう。

距離・契約・重量などに応じた適正運賃の設定
スポット便と固定契約のバランスの取れた運用
配送ルートの最適化やDXの導入によるコスト削減

今後の市場変化に柔軟に対応しながら、持続的な運送ビジネスの構築を目指しましょう。

運送業を始めるために必要な基本情報

一般貨物と軽貨物の違いを理解しよう

運送業には主に「一般貨物自動車運送事業」「貨物軽自動車運送事業(軽貨物)」の2種類があります。(※不特定多数を対象とする特定貨物自動車運送事業は除く)

項目一般貨物
自動車運送事業
軽貨物運送業
定義不特定多数の
荷主の貨物を有償で運送
軽貨物車両による小口配送業務
許可の種類国土交通省の許可が必要運輸支局への届出(許可不要)
開業の難易度
(審査・要件が厳しい)

(届出だけで開業可)
営業範囲全国
(緑ナンバー取得必須)
地域密着型が多い
(黒ナンバー)
車両要件トラック5台以上
(2t・4t・大型)
軽バン・軽トラック1台からOK
運賃形態距離・重量ベースで設定委託・フリーランス契約が主流
収益モデル大口荷主契約・長距離輸送宅配・ラストワンマイル特化
初期費用約500万円以上必要数十万円~(車両購入のみ)

開業に必要な許可と手続きの違い

・一般貨物運送事業 → 法人設立+国の許可が必要
・軽貨物運送業 → 個人でも届出で開業可能

運送業の種類許可の種類開業できる形態許可の取得先
一般貨物自動車運送
事業
国土交通省の許可法人のみ地方運輸局
貨物軽自動車運送事業開業届出個人・法人どちらも可運輸支局

一般貨物運送業に必要な要件と準備

法的要件

・法人であること(株式会社または合同会社)
・資金要件(最低500万円~)
・営業所・車庫の確保(法的条件に適合)
・営業車両5台以上(緑ナンバー取得)
・運行管理者、整備管理者の選任
・安全管理体制(点呼、記録、教育体制)
・運輸開始届の提出(許可取得後)

資金要件の証明方法

証明手段必要書類
預貯金銀行の残高証明書+通帳コピー(3〜6か月分)
資本金登記簿謄本+法人口座の残高証明
資産売却売却証明書・契約書
融資融資決定通知書+資金計画書(補足が必要)

※一時的な入金や不確かな資金は不可。開業までの目安期間は6〜12か月です。

軽貨物運送業の開業要件と届出方法

届出内容と手順

・運輸支局へ「貨物軽自動車運送事業届出書」を提出
・営業用黒ナンバーの取得(軽自動車)

要件と特徴

項目内容
開業形態個人・法人どちらでもOK
資金要件特になし(車両費のみ)
営業所・車庫自宅でOK(要件なし)
車両軽貨物1台から始められる
保険任意保険・貨物保険への加入が必要
開業までの期間約1〜2週間

運送業の主な3種類と違い

運送業を始めるには、事業形態ごとに必要な許可や届出が異なります。主に以下の3種類があります。

※特定貨物とは、特定の荷主専属で運送する事業で、不特定多数を対象とする一般貨物とは異なります。

運送業の種類許可の種類開業形態許可取得先
一般貨物自動車運送事業国土交通省の許可が必要法人のみ地方運輸局
特定貨物自動車運送事業国土交通省の許可が必要法人のみ地方運輸局
貨物軽自動車運送事業(軽貨物)運輸支局への届出個人・法人可運輸支局

一般貨物自動車運送事業の許可要件(法人限定)

不特定多数の荷主を対象に、営業用トラックで貨物を運ぶには、「一般貨物自動車運送事業」の許可が必要です。

開業形態:法人のみ(株式会社・合同会社)
必須許可:国土交通省管轄の「一般貨物運送事業許可」
許可取得のための要件

 資金要件:最低500万円以上(平均1500〜2500万円)→ 資本金+運転資金の証明が必要
 車両:緑ナンバーの営業用トラックを5台以上保有
 営業所・車庫:法令に適合した物件(市街化調整区域不可)
 運行管理者:有資格者を1名以上配置
 整備管理者:有資格者を1名以上配置
 安全管理体制:点呼・記録管理・運行計画の整備が必要
 運輸開始届:許可取得後に提出しないと営業不可

許可取得の流れ

 法人設立(登記)→ 事業計画・資金計画の作成 → 地方運輸局に許可申請(審査:3〜6か月)→ 代表者・役員が「法令試験」に合格 → 許可取得後、運輸開始届を提出

法人で開業するメリット

・融資が受けやすく、資金調達に強い

・荷主からの信用度が高い

・事業拡大や大口案件受注がしやすい

軽貨物運送業の許可要件(届出制・個人可)

軽トラックや軽バンを使って、個人でも始められるのが「貨物軽自動車運送事業」です。許可不要で、運輸支局への届出のみでOKです。

開業形態:個人事業主・法人どちらも可

手続き内容

・運輸支局に「貨物軽自動車運送事業届出書」提出
・営業用ナンバー(黒ナンバー)取得

開業の流れ

 車両(軽バン・軽トラ)を用意

 運輸支局へ届出

 黒ナンバー取得

 事業用保険に加入(自賠責+任意+貨物保険)

 宅配会社や委託元と契約して配送開始

個人で開業するメリット

・許可不要で簡単、最短1週間で開業可能
・初期費用が少なく済む
・副業やフリーランスでも始めやすい

法人化するメリット

・節税メリットが大きい
・企業からの案件受注に強くなる
・従業員を雇い事業拡大が可能

法人と個人、どちらで始めるべきか?

開業タイプおすすめの人主な特徴
法人(株式会社・合同会社)一般貨物運送事業を始めたい人/企業案件を取りたい人許可制・信用力が高い・大規模展開向き
個人事業主軽貨物配送で独立したい人/副業から始めたい人届出制・低コスト・スモールスタートに最適

運送業の開業手続きと流れ

開業前に準備すべき「事業計画」の立て方

運送業のビジネスモデルと市場分析

・EC市場の拡大とラストワンマイル配送の需要増
・2024年問題によるドライバー不足と事業参入の好機
・一般貨物・軽貨物・チャーター便などの業態比較

ターゲット業界・配送形態の明確化

・BtoB(企業配送)とBtoC(個人配送)の違いと選び方
・主要ターゲット(建設資材・医薬品・食品・ECなど)
・都市部/地方、短距離/長距離などの戦略立案

競合分析と差別化ポイント

・競合(ヤマト・佐川・軽貨物フリーランス)との違い
・配送スピード、専門性、コスト最適化での優位性確保

売上と費用を見える化する「収益シミュレーション」

・一般貨物(4トントラック×5台)のモデル収支
・軽貨物(1台・宅配中心)のモデル収支
・利益率と初期コストの比較で見る事業判断

個人事業主 vs 法人設立、どちらで開業すべきか?

個人事業主の特徴とメリット・デメリット

・開業が簡単・低コスト・1台からスタートできる
・信用力・融資・M&Aに弱く、事業拡大に不向き

法人(株式会社・合同会社)の特徴

・許認可取得・大手企業契約・節税に有利
・設立費用・会計処理の複雑さ・赤字時の税負担が課題

どちらを選ぶべきか?判断基準

・軽貨物運送なら「個人事業主」でもOK
・一般貨物運送や中長期の事業展開なら「法人設立」が必須

法人設立の手続きと必要書類の準備

法人設立の流れと期間

・商号・資本金・役員の決定
・定款の作成・認証 → 登記 → 税務署・年金事務所へ届け出
・必要期間:約3〜4週間

法人設立に必要な書類一覧

・登記事項証明書、定款、代表者の履歴書
・資金証明(残高証明書・資本金証明)、営業所・車庫の契約書など

運送業の許可取得までのステップ(一般貨物の場合)

許可申請から営業開始までの流れ

1.法人設立・事業計画の作成

2.営業所・車庫・車両(5台以上)の確保

3.地方運輸局へ申請書提出 → 審査(3~6ヶ月)

4.法令試験(代表者・役員)に合格

5.許可取得 → 運輸開始届提出 → 営業開始

必須書類一覧と注意点

・車両登録証明書(緑ナンバー)
・運行管理者・整備管理者の選任届
・保険加入証明書、資金証明書類など

軽貨物運送業の届出手続き(個人・法人共通)

届出の流れと必要書類

・運輸支局に届出 → 黒ナンバー申請 → 任意保険加入
・必要書類:車検証、任意保険証明、黒ナンバー申請書など

開業までの期間と費用目安

・約1〜2週間で開業可能
・中古車やリースを活用すれば、初期費用は50万円以下も可能

運送業の開業は準備と手続きがカギ!

比較項目一般貨物運送業(法人)軽貨物運送業
(個人 or 法人)
開業難易度高(許可制)低(届出制)
開業期間6ヶ月〜12ヶ月約1〜2週間
必要資金1,500万〜3,000万円程度数十万円〜
利益率5〜15%約70%以上
成長性・信用力高い(大手との取引向き)低〜中(個人・副業向き)

運送業開業後に必要な手続きと運営のポイント

車両とドライバーの手配

車両リースと購入の比較(コスト面から考える)

項目車両リース車両購入
初期費用低い(頭金不要〜少額)高い(ローンor一括購入)
月額費用定額リース料変動(ローン+維持費)
維持費車検・税金込みが多い自己負担
所有権リース会社自分(完済後)
カスタマイズ制限あり自由に可
減価償却経費計上のみ資産計上可
最終的なコスト短期使用向き長期保有向き

▶ポイント

・短期利用や管理簡素化なら「リース」
・長期保有・カスタム重視なら「購入」

ドライバーの雇用形態と働き方

項目正社員業務委託フリーランス
雇用関係雇用契約あり委託契約自由(個人事業主)
給与固定+歩合完全歩合案件ごとの報酬
社会保険会社が加入自己負担自己負担
安定性高い中程度低い
働き方の自由少ない一部自由完全自由

▶選び方の目安

・安定と福利厚生を求める:正社員
・自由と報酬重視:業務委託・フリーランス

ドライバー不足と採用対策

主な原因

・長時間労働・低賃金
・資格取得のハードル
・2024年問題による労働時間制限

主な対策

・労働環境の改善(週休2日・待機時間短縮)
・給与アップ+福利厚生充実
・若手・女性の採用強化(設備・免許支援)
・デジタル活用(AI配車・自動運転)
・外国人労働者の活用(特定技能ビザ)

事業の運営と利益最大化のコツ

コスト管理のポイント

燃料費エコドライブの徹底(急加速・無駄なアイドリングの削減)
燃費の良い車両を導入(ハイブリッド・EV)
ルート最適化(AI配車・GPS活用)
法人向け燃料カードで割引利用
保険費用任意保険(対人・対物・貨物保険)を比較して契約
テレマティクス保険の導入で保険料を抑える
不要な補償内容の見直し
メンテナンス費定期点検を徹底し、故障リスクを減らす
消耗品はまとめて購入でコスト削減
リース契約にメンテナンス込みプランを選ぶのも○

荷主の確保方法

紹介

・信頼度が高く、契約率も高い
・商工会や業界団体、SNS経由での紹介依頼が有効

直接営業

・高単価案件を直接獲得
・電話・訪問・DM・SNSで営業アプローチ

マッチングアプリ

・大手対応型、地域限定・ラストワンマイル型、全国案件が検索できる
・配車管理連動・地図連動など種類が豊富である為、自社にマッチングしたものを選ぶ

 *単発案件には有効。継続案件は紹介や営業で確保がベター。

デジタル化による効率化

課題解決

・回送削減 → AI配車で効率化
・遅延対応 → GPS監視で即対応
・コスト削減 → 最短ルートで燃料費節約

経営管理と法令遵守の重要性

運行管理者の役割

運行管理者の主な業務

・配車・運行スケジュール管理
・点呼・アルコールチェック・健康管理
・車両点検・整備管理
・労働時間・健康状態の管理
・法令遵守と届け出対応

重要性の理由

・安全運行 → 事故防止
・コスト最適化 → 配車・燃費管理
・信頼向上 → 荷主との継続契約
・法令対応 → 2024年問題対策

取得方法

・国家試験(年2回/合格率30~40%)
・補助者としての実務1年以上+講習受講

労働時間管理と「改善基準告示」

項目基準値
1日最大拘束時間13時間(例外16時間)
1か月最大拘束時間293時間
1日運転時間9時間以内(例外13時間)
連続運転時間4時間以内に30分以上の休憩
年間時間外労働(2024年以降)上限960時間

対策

・デジタルタコグラフで記録管理
・AI配車で拘束時間の削減
・点呼で健康・アルコールチェック
・確実な休憩・仮眠の確保

開業後の運営が「収益」と「信頼」を決める!

・車両と人材の最適な調達方法を見極める
・コスト管理は利益率の要
・荷主獲得とマッチングは複数手段で展開
・法令遵守と運行管理体制の整備が長期経営の土台

運送業を成功させるためのポイントと注意点

運送業で生き残るための戦略

運賃交渉力を高めて値下げ競争を回避

運送業界では、価格競争に巻き込まれると利益が圧迫されます。安定した収益を確保するためには、適正運賃での契約を実現する交渉力が欠かせません。

交渉力強化のポイント

コストを可視化して根拠を示す
 燃料費・人件費・車両維持費などを明示し、「この金額以下では赤字になる」と説明。

サービス品質で差別化
 単なる運搬業者ではなく、配送精度・トラブル対応など“物流のパートナー”として提案。

荷主側のコスト削減を提案
 ルート最適化や待機時間の削減など、荷主にもメリットのある提案を行う。

差別化と独自サービスの展開

値段以外の強みをつくることで、価格競争から抜け出せます。

差別化の具体例

差別化ポイント内容例
即日配送緊急ニーズに対応し、高単価受注が可能
チャーター便貸切輸送で柔軟性が高く、長期契約につながる
専門輸送医療機器・冷凍食品など高付加価値貨物に対応
デジタル化GPS追跡・AI配車などで透明性・効率を強化


高単価契約につながる独自サービス例

・即日配送 × チャーター便(緊急配送・夜間対応)
・専属チャーター契約(定期便を月額固定で提供)

荷主との信頼関係が継続契約につながる

リピーター獲得こそが、運送業の安定収益の鍵です。

・配送品質・対応力の向上
・クレーム時の誠実な対応
・遅延・トラブルの「見える化」などが信頼獲得に直結します。

失敗しないための注意点

資金繰りとキャッシュフロー管理の重要性

車両代・人件費・燃料費など、固定費も変動費も大きいのが運送業の特徴です。

初期投資額(一般貨物で500万〜)を甘く見ないこと
売上が立つ前の資金繰り(最低3ヶ月分)は確保すること

法令違反で営業停止になるリスク

法令遵守は絶対条件です。

改善基準告示に基づいた労働時間管理
運行管理者・整備管理者の適正配置
過労運転・違法残業は厳罰対象

*違反事例:ドライバーの過労運転で行政処分、許可取消に至るケースも。

業務委託契約のトラブル回避策

委託ドライバーを活用する場合、契約書の整備が不可欠です。

よくあるトラブルと回避策

偽装請負の指摘:勤務時間の指示NG、報酬は出来高制に
報酬計算の曖昧さ:単価・キャンセル時の扱いなどを契約書に明記
契約解除時のトラブル:通知期間・解約条件を設定
事故時の責任所在不明:任意保険・貨物保険の加入義務を明記

成功する運送業のカギとは?

運送業を成功させるためには、価格競争に陥らず、差別化と信頼構築を徹底することが重要です。さらに、適正な契約・法令遵守・資金管理を怠らず、安定経営を目指しましょう。

成功のポイント

・運賃交渉力と高付加価値サービスの提供
・リピーター獲得による安定収益
・法令遵守・資金繰り・委託管理の徹底

まとめ

運送業の開業には、事業形態に応じた手続きや許可の取得が必要不可欠です。一般貨物では法人設立と厳格な要件クリアが求められ、軽貨物なら個人でもスピーディに開業可能です。市場成長が続く物流業界で安定収益を確保するには、適正運賃の設定・差別化戦略・法令遵守がカギ。事前準備と戦略的な運営により、持続可能な運送ビジネスの構築を目指しましょう。