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運送業のカーボンニュートラル実現に向けた取り組み

2025年7月10日
運送会社M&A

はじめに

地球温暖化や環境問題への関心が高まる中、カーボンニュートラル(炭素中立)の実現は、全産業にとって重要な課題となっています。特に、運送業界はCO2排出量の大きな発生源であるため、その取り組みが急務です。運送業のカーボンニュートラル化は、環境への配慮だけでなく、企業の持続可能な成長を実現するための重要な戦略となりつつあります。本記事では、運送業界が進めるカーボンニュートラル実現に向けた戦略や技術的な取り組みを紹介します。

運送業のカーボンニュートラル化とは?

カーボンニュートラルとは、CO2排出量を削減し、排出されたCO2と同量の削減または吸収を行うことを指します。運送業界においては、燃料消費によるCO2排出が大きな課題であり、これを削減するためにさまざまな取り組みが進められています。

運送業界におけるCO2排出の現状

運送業界は、全世界の温室効果ガス排出量の約15%を占めるとされています。その中でも、ディーゼルトラックや貨物車両などの商用車による排出が主要な原因です。燃料効率の改善や新しい技術の導入なしでは、カーボンニュートラルを実現することは難しいと言えます。

運送業のカーボンニュートラル戦略

運送業がカーボンニュートラルを達成するためには、以下の戦略が考えられます。

電動車両(EV)導入

電動車両は、ガソリンやディーゼル車両に比べてCO2排出量を大幅に削減できます。近年では、EVトラックやEVバンが開発され、商用輸送にも対応できるようになっています。

  • メリット
    • ゼロエミッション:排出ガスがないため、環境負荷を大幅に削減。
    • ランニングコストの削減:電力で走るため、燃料費を抑えることができ、長期的に経済的な利点がある。
    • 規制への対応:多くの国や地域で、温室効果ガスの排出規制が強化されており、EV導入は法的要件への適応に寄与します。

  • 事例
    • 米国のUPS:UPSは、EVトラックの導入を加速しており、将来的には数千台規模での導入を計画しています。
    • DHL:DHLは、電動配達バンの導入を進め、2030年までに全世界の自社車両の70%を電動化する目標を掲げています。



水素燃料電池車両(FCV)

水素燃料電池車両(FCV)は、水素と酸素を反応させて発電し、電力でモーターを駆動する車両です。排出されるのは水蒸気のみで、カーボンニュートラルな輸送手段として注目されています。

  • メリット
    • 長距離輸送:水素車は電動車両より航続距離が長い為、長距離輸送に適しています。
    • 迅速な充填:充電時間が電気車両に比べて短く、スムーズな運行が可能です。

  • 事例
    • トヨタの水素燃料電池トラック「H2トラック」は、長距離輸送を視野に入れて開発され、実際に試験運行が行われています。
    • メルセデス・ベンツの「アクトロス F-CELL」は、水素燃料を利用したトラックであり、商用車両としての実用化に向けて進行中です。

バイオ燃料の活用

バイオ燃料は、植物由来の原料から生成されるエネルギー源で、CO2の排出量が従来の化石燃料に比べて少ないとされています。バイオ燃料を使用することで、運送業のカーボンフットプリントを削減することができます。

  • メリット
    • 既存のインフラで活用可能:既存のディーゼルトラックやインフラをそのまま利用できるため、初期投資を抑えることができる。
    • 再生可能エネルギー:バイオ燃料は再生可能な資源から作られ、持続可能なエネルギー供給が可能です。

  • 事例
    • 英国の物流企業「XPOロジスティクス」は、バイオディーゼルを使用したトラックで配送を行い、CO2排出量の削減を実現しています。

技術的な取り組み

エコドライビング技術の導入

運送業界では、エコドライビングが重要な取り組みです。AIを活用した運転支援システム(ADAS)や運転技術の向上により、運転中のエネルギー消費を削減し、無駄なCO2排出を減少させる事ができます。

  • メリット
    • 燃費改善:エコドライビングにより、燃料消費が抑えられ、運送業務のコスト削減に繋がります。
    • 安全性の向上:無理な加速や急ブレーキを避けることで、事故のリスクも減少。

AIによる運行管理システム

AIを活用した運行管理システムは、リアルタイムでの運行データを分析し、最適なルートを提案したり、車両の運行状況を管理したりします。これにより、無駄な燃料消費を防ぎ、効率的な輸送を実現します。

  • メリット
    • 運行ルートの最適化:AIは、交通渋滞や事故情報をリアルタイムで反映し、最短ルートや効率的な輸送計画を提案します。
    • ダイヤ調整:AIによって、配送スケジュールの最適化が図られ、運転時間の短縮が可能となります。

カーボンニュートラル実現に向けた政策と規制

各国政府は、運送業界のカーボンニュートラル化を進めるために、さまざまな政策や規制を導入しています。これには、温室効果ガス排出の規制強化やカーボンプライシング(炭素税)の導入などがあります。

  • ・欧州連合(EU)は、2030年までに運輸部門のCO2排出量を50%削減する目標を掲げており、これを達成するための法整備が進んでいます。
  • ・日本では、カーボンニュートラル政策に基づき、運送業界を対象とした税制優遇措置や補助金制度が導入され、EV車両や水素車両の導入支援が行われています。

まとめ

運送業界のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みは、技術革新と戦略的な政策対応が不可欠です。EVや水素燃料車、バイオ燃料の導入、そしてAIによる効率化など、多くのアプローチが実施されており、業界全体での取り組みが進んでいます。環境負荷を削減し、持続可能な社会を実現するために、運送業界はこれからも進化し続け、カーボンニュートラルの実現に向けた一歩を踏み出していく必要があります。

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