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運送業における労働環境のデジタル化:シフト管理から健康管理まで

2025年7月11日
運送会社M&A

はじめに

運送業界は今、慢性的な人手不足と高齢化、そして2024年問題と呼ばれる労働時間規制の強化という三重苦に直面しています。こうした状況に対応する鍵が、デジタル技術による業務改革=DX(デジタルトランスフォーメーション)です。本稿では、業界が抱える課題を背景に、シフト管理、健康管理、業務効率化の3つの領域で、どのようにデジタル技術が労働環境の改善に貢献しているのかを具体的に掘り下げます。

シフト管理のデジタル化:業務と労働時間の「見える化」

従来の課題

  • ・紙やExcelベースの管理では労働時間の正確な把握が困難。
  • ・管理者の作業負担が大きく、シフト調整に時間がかかる。
  • ・拘束時間や休憩時間の管理が曖昧になり、労基法違反リスクも。

デジタルでの解決策

導入が進むのが、クラウド型の勤務管理・勤怠システムです。代表的なサービスには「KING OF TIME」「freee勤怠管理」「勤革時」などがあり、以下の点で大きな効果を上げています。

  • ・GPS打刻や顔認証で正確な出退勤記録が可能。
  • ・勤務間インターバル制度(休息時間の確保)への対応。
  • ・36協定違反の兆候が自動で警告される機能も。
  • ・複数拠点・車庫のドライバーを一元管理でき、業務割当の効率化も実現。

現場の声

「シフト調整や休暇申請がスマホ一つでできるようになり、管理者もドライバーもストレスが減った。」(中堅運送会社・総務部)

健康管理のデジタル化:事故予防と離職防止を両立

ドライバーの健康は、安全運転と業務継続に直結します。特に長時間労働・夜間運行・不規則な食事や睡眠などが重なる運送業では、健康リスクへの対策が不可欠。

最新の取り組み

ウェアラブルデバイスの活用

  • ・スマートウォッチで心拍・血圧・睡眠状態を記録。
  • ・企業側は異常値の検知アラートを受け取り、早期対応が可能。

健康管理アプリの導入

  • ・「カロミル」「ヘルスプラネット」などで食事・体重・運動記録をドライバー自身が可視化。
  • ・産業医や保健師と連携し、定期的なオンライン健康面談も可能。

車両連動のモニタリング

・運転中の急ブレーキ・急加速・ふらつき運転などをAIが検出。

・居眠りや疲労運転のリスクを事前に察知し、リアルタイムでアラートを出す仕組みも登場。

導入メリット

・過労死リスクや事故率の低下。

・健康管理に対する企業の姿勢が明確になり、離職率が改善。

・労災リスクの低減や保険料の見直しにもつながる。

業務効率化のデジタルツール活用:物流業務全体の最適化

デジタル化は単に「紙の業務を電子化する」だけではありません。現場の動きをデータで捉え、業務全体を最適化する仕組みが導入されています。

主な技術と導入事例

項目内容効果
動態管理システム(例:Logizard ZERO、Cariot)GPS+IoTで車両の位置・走行ルート・停止時間をリアルタイム表示運行状況の「見える化」、遅延対応、顧客満足度向上
配車最適化AI(例:トラボックス、ROUTEHUB)配送先・荷量・車両情報をAIが自動で最適ルート提案配送効率アップ、CO2削減、ドライバーの拘束時間短縮
電子日報アプリ(例:モバイルアイ、Drive Report)運行記録・報告書をスマホで記録・送信業務報告の時短、データ集計の自動化

今後の展望と導入のポイント

運送業におけるDXは、単にツールを導入するだけでは効果が出にくく、「現場の声を反映した設計・運用」が成功のカギとなります。

成功のポイント
現場の理解と納得感を得るための説明会やトライアル導入

・ツール選定では「使いやすさ」と「サポート体制」を重視

・導入後の効果測定とPDCAサイクルの運用

今後は、国の助成金制度(IT導入補助金、働き方改革推進支援助成金など)を活用しながら、中小企業でも無理なくDXに取り組める体制づくりが期待されます。

まとめ

運送業界の未来を支えるのは、「人材」そして「働きやすい環境」です。デジタル化によって、業務の見える化、効率化、そして従業員の健康と安全を守る体制が整えば、運送業はより魅力的な職場へと進化します。テクノロジーを味方につけ、「安全・安心・効率」の三拍子そろった職場づくりを進めることが、今後の持続可能な物流を支える重要な一歩になるでしょう。

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