はじめに
地球温暖化対策が加速する中、物流・運送業界も「脱炭素」への対応が急務となっています。特にEV(電気トラック)や水素トラックの導入は、今後のゼロエミッション社会の実現に欠かせない要素です。本記事では、政府のカーボンニュートラル目標と運送業界への影響、EV・水素トラックの導入支援策、コスト面の課題、そして先進企業の実例を交えながら、次世代物流への道筋を詳しく解説します。
目次
政府は「2050年カーボンニュートラル」を掲げ、産業全体の脱炭素化を推進しています。運送業界は日本全体のCO₂排出量の約18%を占めており、とりわけ商用車(トラック)の電動化が重視されています。
🚛 主な影響と義務化の動き:
国や自治体は、EV・水素トラック導入を後押しする補助金制度や税制優遇措置を展開しています。
主な補助金・支援制度(2025年時点)
支援内容 | 概要 |
---|---|
商用車グリーン化補助金 | EV/FCトラック導入費用の1/2〜2/3補助(条件あり) |
インフラ整備補助 | 急速充電器や水素ステーションの設置費用を補助 |
税制優遇 | 自動車重量税・取得税の減免など |
📌 導入事例:
EV・水素トラックには大きな将来性がありますが、導入にはインフラ・価格・性能という現実的な課題も存在します。
① 車両価格の高さ
EVトラックはディーゼル車に比べて2〜3倍の車両価格となる場合が多く、水素車はさらに高額です(1台あたり数千万円規模)。
② インフラ整備の遅れ
③ 航続距離と積載性能の制約
EV・水素トラックの導入を検討する企業は、「コスト回収」の視点を持つことが重要です。以下に、損益分岐点を計算する上での主要項目を示します。
導入までのステップ:
1.補助金・助成制度の確認と申請
2.運行ルートに応じた車両選定(航続距離・積載量)
3.充電/水素インフラの検討
4.ドライバー教育・車両管理体制の整備
📊 コスト比較イメージ(5年運用)
項目 | EVトラック | ディーゼルトラック |
---|---|---|
購入価格 | 約1,200万円 | 約600万円 |
燃料・電気代 | 年間約30万円 | 年間約70万円 |
メンテナンス | 低め(部品点数が少ない) | 高め |
補助金 | 最大600万円相当 | 対象外 |
➡ 損益分岐点:約5〜7年(長距離配送より短距離・定常ルート向き)
ゼロエミッション車両の導入は、単なるイメージアップではなく、物流効率の向上・コスト削減・規制対応といった多面的な目的を持って進められています。ここでは、実際にEVや水素トラックを導入・実証している2社の具体事例をご紹介します。
佐川急便(SGホールディングス):EV宅配車両を都市部で本格導入
佐川急便は、2022年から本格的にEV宅配車両の導入を進めており、2025年度までに小型商用EVトラックを7,000台規模で導入する計画を公表しています。すでに東京都・大阪府・愛知県の都市部では、実運用が始まっています。
🔋 導入概要:
🧠 特徴的な取り組み:
📈 成果:
日野自動車 × セブン&アイ・ホールディングス:水素燃料トラックの共同実証
セブン-イレブンを展開するセブン&アイHDと日野自動車は、水素燃料電池(FC)トラックによるコンビニ配送の共同実証プロジェクトを2023年から開始。これは「脱炭素×安定輸送」の両立を目指したモデルケースとして注目されています。
🚛 導入車両・技術:
📍 実施概要:
📌 検証目的:
🌱 脱炭素効果:
1.国や自治体の補助金制度を積極的に活用(最大導入コストの1/2〜2/3相当を補助)
2.段階的導入(限定エリア・限定ルートからスタート)
3.IT・AIとの連携による効率運用(ルート最適化・稼働データ解析)
4.社会的評価・ブランド価値向上への波及効果
これらの事例は、ゼロエミッション車両の導入が単なる「環境対策」にとどまらず、競争力強化・業務効率化の要となり得ることを示しています。
まとめ
脱炭素対応は「先行者利益」となる可能性も
EV・水素トラックの導入は、確かに初期投資やインフラ面で課題があるものの、長期的には環境規制への対応力やブランド価値向上に直結します。さらに、国からの支援を活用すれば、損益分岐点の短縮も十分に可能です。
今後は、以下のような対応が求められます:
✅ 対応チェックリスト
2050年カーボンニュートラルを目指す今、運送業におけるEV・水素トラックの導入は、単なる選択肢ではなく「生き残るための戦略」といえるでしょう。