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【2025年問題に備える運送業界】物流需要の変化と人手不足への対応戦略

2025年7月4日
運送会社M&A

はじめに

 2025年、運送業界は複数の大きな変化に直面します。「団塊の世代」が全員75歳以上の後期高齢者となり、国内の高齢化が急速に進行する中、2024年に本格化した「物流の2024年問題(働き方改革関連)」の影響も加わり、物流現場はこれまでにない課題にさらされています。同時に、EC市場の成長や消費者ニーズの多様化により、ラストワンマイル配送を含む物流需要は急拡大中。こうした変化の中で、運送・物流事業者には、これまでとは異なる視点での再構築・見直しが求められています。本記事では、2025年に向けて運送業界が直面する構造的課題と、それにどう対応していくべきかを具体的に解説します。


2025年問題と物流の2024年問題が同時に到来すると何が起きるのか?

 2025年、日本では団塊の世代(1947~49年生まれ)がすべて後期高齢者となります。これは国全体の医療・福祉に大きな影響を与えると同時に、「労働力人口の急激な縮小」という形で運送業界にも影響を及ぼします。さらに2024年からは、働き方改革関連法によりトラックドライバーの年間時間外労働時間に960時間の上限が設けられ、「運べる量」自体が制限される事態に。これが、いわゆる「物流の2024年問題」です。

📉 影響まとめ:

  • ・配送能力の低下(ドライバー数×稼働時間の減少)
  • ・中長距離輸送のコスト増
  • ・配送遅延や受託制限のリスク


EC市場の拡大と“ラストワンマイル配送”の急増

 消費者の生活スタイルが変化し、ネットショッピングや食料品宅配の利用が定着した今、ラストワンマイル配送のニーズは急増しています。特に都市部では「小口・高頻度・即時配送」への要求が高まっており、大手宅配会社だけでなく地域密着の運送事業者や自社物流をもつ企業も対応に追われています。

🔍 注目すべき変化:

  • ・「届け先が企業」から「個人宅」へ
  • ・「週1配送」から「即日・時間指定」へ
  • ・「大量一括輸送」より「小ロット多品種配送」へ

こうした変化は、従来の中距離〜長距離輸送中心の運送モデルでは対応しきれず、新たな輸配送体制の再構築が迫られています。


「自社物流」と「委託物流」:いま見直すべき運用戦略

 労働力不足と輸送コストの上昇を背景に、多くの企業が自社物流と外部委託のバランスを見直しています。特に重要なのが、「何を内製化し、何を外注するか」の線引きです。

自社物流の強みと限界

  • ✔ 柔軟な運用・ブランドイメージ保持
  • ✘ 運転手確保や車両管理の負担増

委託物流(3PL)の利点とリスク

  • ✔ 専門業者による効率化・拠点網の活用
  • ✘ 契約制限・繁忙期の対応力不足

🔑 見直しのポイント:

  • ・ラストワンマイルは自社対応、幹線輸送は委託へ切替
  • ・地域密着の小規模委託業者と連携強化
  • ・契約内容の柔軟性・可変性を確保


対応戦略①:多拠点展開とマイクロデポの有効性

 拠点数を分散し、配送先に近い小規模デポ(マイクロデポ)を設置することで、ラストワンマイル配送の効率を大幅に向上できます。これはAmazonや楽天などのEC大手がすでに取り組んでいる施策でもあります。

📍 マイクロデポのメリット:

  • ・配送距離の短縮でドライバー負担軽減
  • ・時間指定や即日配送対応が可能に
  • ・地域雇用の創出にも貢献

🚚 実例(想定)
「首都圏郊外に複数のマイクロデポを配置し、各エリアで軽貨物ドライバーがピストン輸送を行う仕組み」など


対応戦略②:物流の“地産地消モデル”とは?

 近年注目されているのが、「物流の地産地消」的な考え方。これは、「地域で完結する物流モデルを構築する」という考え方です。地域内で商品を保管・配送する事で、輸送距離を短縮し、ドライバーの拘束時間を削減できます。

🌾 地産地消物流の具体例:

  • ・地場の食品ECや農産物宅配サービスが地元ドライバーを活用
  • ・商業施設と連携した地域内共同配送

🌍 導入の利点:

  • ・カーボンニュートラルへの貢献
  • ・災害時の強靭性確保(ローカル配送網の維持)
  • ・雇用創出と地域経済の活性化




まとめ

分散と最適化がカギ:2025年の物流を支える戦略的再設計

 2025年に向けて、運送業界が直面する課題は複雑かつ多層的です。人手不足、配送制限、需要の変化に対応するには、以下のような分散と最適化をベースとした戦略的再設計が求められます。

対策チェックリスト:

  • ・人材確保だけでなく、働き方の再設計
  • ・自社と委託の適切なハイブリッド運用
  • ・小規模拠点・地産物流モデルの活用

 2025年を単なる「危機」とせず、次の物流のスタンダードを築く好機とすることが、これからの運送業界に求められる視点です。

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