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物流の「ラストワンマイル」戦略:競争激化時代の差別化ポイントとは?

2025年7月10日
運送会社M&A



はじめに

ネット通販(EC)の急成長により、荷物の“最後の届け先”をどうするかが物流業界の大きな課題になっています。それが、「ラストワンマイル(Last One Mile)」問題です。大手宅配会社の再配達負担や人手不足が顕在化する中、小規模運送業者にも新たなビジネスチャンスが生まれています。本記事では、ラストワンマイルの基本から、差別化戦略、現場で役立つサービス改善策までを解説します。

「ラストワンマイル」とは何か?

「ラストワンマイル」とは、荷物を最終的に消費者の手元へ届ける“最後の区間”を指します。具体的には…

  • 配送センター → 個人宅・オフィスへの配達
  • 地域拠点 → 店舗・飲食店などへの納品
  • EC倉庫 → 購入者の玄関先まで

物流工程の中でも最も手間とコストがかかるのが、この“最後の1マイル。配送先がバラバラで、時間指定や再配達リスクが高く、人件費も嵩みます。

なぜ今、ラストワンマイルが問題視されているのか?

以下の背景により、ラストワンマイルへの負荷が急増しています。

● EC市場の急拡大
コロナ禍以降、日用品や生鮮食品までネット購入が一般化。配送量が激増し、従来の物流体制では対応しきれないケースも。

● 消費者ニーズの多様化

  • ・時間指定の厳格化
  • ・置き配や非対面ニーズ
  • ・再配達率の上昇

これにより、「きめ細やかな対応力」が求められるようになっています。

● 大手宅配業者の人手不足・コスト限界
一部の大手業者は個人配達単価の値上げや委託の縮小を進めており、その空白を地域の中小運送業者が補完する役割として期待されています。

小規模運送業者が取るべき「ラストワンマイル戦略」とは?

大手と同じ土俵で戦うのではなく、「地域密着」「柔軟対応」「ニッチ戦略」がカギになります。

✅ 差別化戦略①:地域密着×顔の見える配送

地元住民や店舗からは「●●運送の××さん」として認知されるような、人間関係と信頼ベースの配送サービスを展開。
⇒ 置き配の柔軟対応、細かい要望への即応性など、大手にはできない距離感の近さが強み。

✅ 差別化戦略②:B2Bの定期便・ルート配送に特化

例えば、地元飲食店や中小小売への日々の納品・補充業務など、ECとは別軸のニーズを取り込む。
⇒ ルート固定+再配達なしで効率的かつ安定した収益源となる。

✅ 差別化戦略③:ラストワンマイル専業・委託受託モデル

大手EC物流会社の地域ラストマイル配送を請け負う宅配代行ビジネスも拡大中。
⇒ 自社車両・ドライバーを活用して、1日〇件×委託単価のストック型収益が可能。

サービス品質を高める実践的な工夫とは?

■ 配送体験の「快適さ」で差をつける

  • ・事前のSMS通知、LINE通知
  • ・ドライバーによる手書きメモ・挨拶
  • ・荷物の丁寧な取り扱いと清潔感

「届け方」そのものをブランド化することで、個人から法人まで“この人にお願いしたい”と思われる配送体験を提供できます。

■ 「置き配・非対面」のニーズに対応する

  • ・指定場所への丁寧な置き配
  • ・写真報告・完了通知の自動化
  • ・配達ボックスとの提携

置き配への理解を深め、トラブルを防ぎつつ利便性を高める仕組み作りが重要です。

■ 地域商圏との連携で“配送+α”の価値を

  • ・地元農家→消費者への定期配送
  • ・商店街の商品まとめ配達
  • ・高齢者への安否確認つき配達 など

“運ぶ”だけでなく“つながる”サービスへ。これが地場配送業者の次の進化です。

ラストワンマイル戦略を成功させる3つの視点

視点内容
顧客目線配達の“速さ”だけでなく“安心・丁寧さ”を意識
経営目線配送効率・単価・稼働率をデータで管理
地域目線顧客・事業者・行政と連携し、地域インフラに進化

まとめ

ラストワンマイルは単なる「距離」の問題ではありません。“どう届けるか”が企業の信頼と価値を決める時代に突入しています。小さな運送会社だからこそできる、

  • ・地域密着の温かみ
  • ・顧客に寄り添う柔軟性
  • ・小回りの効く対応力

こうした差別化で、大手に埋もれず“選ばれる配送業者”を目指しましょう。

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